『夜明けのすべて』感想|しんどい時におすすめ。すべてが優しい世界。

本作を観てまず、「なんて優しい映画なんだ…」と思いました。

『夜明けのすべて』は、PMS(月経前症候群)やパニック障害を抱えながら生きる二人を通して、“長い夜をどう過ごすか”を描いた作品です。

タイトルの『夜明けのすべて』には、“朝が来る瞬間”だけではなく、夜から朝へ向かうまでのすべての時間が含まれていて、病気を抱えながら辛く“長い夜を過ごしている人たち”への優しい眼差しが込められているような。
派手な展開はないのに、不思議と心に残る。
そんな優しさに満ちた一本でした。

目次

『夜明けのすべて』あらすじ

月に一度、PMS(月経前症候群)による強いイライラに悩まされている藤沢さん。ある日、同僚の山添くんの些細な行動をきっかけに感情を爆発させてしまう。

転職してきたばかりで無気力に見えた山添くんもまた、パニック障害を抱え、生きがいや気力を失っていた。職場の理解に支えられながら過ごすうちに、恋人や友達とは少し違う、“同志”のような特別な感情が二人の間に芽生えていく。

やがて彼らは、自分の症状を完全に治せなくても、相手を支えることはできるのではないかと考え始める――。

『夜明けのすべて』感想

「なんて優しい映画なんだ」と思った

本作を観て、まず感じたのは「なんて優しい映画なんだ…」ということでした。
またそれと同時に、とにかく丁寧に描かれた作品だとも思いました。

藤沢さんのPMS(月経前症候群)の症状や、山添くんのパニック障害の発作。それらを抱えながら、淡々と日々を過ごしていく姿。そして二人を取り巻く人間関係――職場や友人、家族、恋人まで含めて、本当に繊細に描かれています。

印象的だったのは、“悪い人”が一人として出てこないこと。

だからこそ、病気を抱えて生活することの大変さや、人との関わりの中で生まれる小さな支えに自然と目が向いていきます。

「治す」だけではない支え方

その中で感じたのは、「治ること」だけがゴールではないのかもしれない、ということ。

薬や治療も大事だし必要だけれど、病気に一番効くのは、案外誰かの優しさなのかもしれない、そんなことを思わされました。

藤沢さんと山添くんは、互いの病気を完全に理解できるわけではない。けれど、それでも理解しようとしてくれる姿勢や、寄り添おうとしてくれるその気持ちが、一番当事者にとって心の支えになるのではないかと思いました。

弱みを見せ合えるからこそ、ときには病気を笑いに変えることもできる。
その距離感も、とても心地よかったです。

恋愛にしなかったからこそのリアリティ

そして本作の好きなところは、二人の間に恋愛感情が生まれないところ。

“支え合う関係”を無理に恋愛へ発展させないからこそ、この映画の優しさやリアリティがより際立っていた気がします。

……とはいえ、あんなに優しく寄り添ってくれる松村北斗さんが相手なら、自分だったら普通にコロッといってしまいそうですが笑。

松村北斗さん・上白石萌音さんの演技が素晴らしい

松村さんの演技は、とても自然。それでいて、ふとした表情でしっかり魅せてくるのが良い。

最初はどこかクールで冷たく、職場でも少し浮いて見えた山添くんが、藤沢さんとの交流を通して、周囲への気遣いを見せるようになっていく。その変化がとても丁寧でした。

そして、上白石萌音さんも本当に素晴らしかったです。

普段は真面目で気遣い120%なのに、PMSによって感情を抑えきれなくなる藤沢さん。その繊細さや苦しさを、控えめながら芯のある演技で見事に表現していました。

それぞれが痛みを抱えながら生きている

また、彼らを取り巻く人たちも、それぞれ悲しみや目に見えない痛みを抱えて生きている。

栗田科学の社長・栗田和夫(光石研)は、弟を亡くした過去を抱え、グループセラピーに通っている人物。
一方、山添くんの以前の上司(渋川清彦)にも、大切な人を失った過去がある。

PMSやパニック障害などの病を抱える者、悲しみを抱えている者。それぞれが苦しみながらも、互いに支え合い、労わり合って生きている。
問題がすぐに解決するわけではないけれど、それでも夜明けを迎えるために、明日を迎えるために、互いに支え合うことが大切なことだと思いました。

総じて、ストーリーが淡々と進み描かれているのも良かった。

優しい音楽、穏やかな空気感、役者さんたちの自然で温かみのある演技。それらすべてが、この作品の世界をそっと包み込んでいるようでした。

疲れた時や、いらだった時、それこそPMSでしんどい時なんかにめちゃくちゃ推したい一本です!

追記

先日、持病の偏頭痛を久しぶりに発症しました。
その時に、ふと本作のことがよぎりました。

偏頭痛も、特性やつらさがまだ十分に理解されているとは言い難く、仕事や約束がある場面では、相手に迷惑をかけてしまうこともある。
だからこそ、どう説明したらいいのか悩む瞬間も少なくありません。

そんな時に思ったのは、マイナーな病気や症状が広く認知され、理解されていくこと自体が、当事者の生きやすさにつながるのだということ。

この映画を通して、PMSやパニック障害への理解や認知が、もっと広がっていけばいいなと切に思いました。

『夜明けのすべて』見どころ

◇PMSやパニック障害など、“生きづらさ”を抱えた二人を描くヒューマンドラマ
→ 互いを少しずつ理解し支え合っていく姿が丁寧に描かれる。

◇恋愛とも友情とも違う、“同志”のような関係性
→ 言葉では簡単に表せない距離感が、この作品ならではの魅力。

◇三宅唱監督による繊細な演出
→ 何気ない会話や沈黙、季節の移ろいまで美しく映し出し、日常の中の“小さな光”を感じさせる。「ケイコ 目を澄ませて」でも評価されたリアルな空気感。 派手な演出ではなく、人の感情の揺れを静かにすくい上げる映像表現が印象的。

◇松村北斗 × 上白石萌音の自然体な演技
→ NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」以来の共演となる。不器用ながらも相手を思いやる二人の距離感が心に残る。

◇光石研、りょう、渋川清彦ら脇役陣の存在感も光る
→ “理解されにくい苦しさ”に寄り添う周囲の人物たちが、作品にリアリティと温かさを与えている。

🌿こんな人におすすめ

  • 人間関係に少し疲れている人
  • 優しい気持ちになれる映画を観たい人
  • 恋愛だけではない、“支え合う関係”を描いた作品が好きな人
  • PMSやパニック障害など、生きづらさをテーマにした作品に関心がある人
  • 派手な展開より、日常を丁寧に描く映画が好きな人
  • 松村北斗さん、上白石萌音さんの自然体な演技を観たい人
  • 静かな余韻のある作品が好きな人
  • 疲れている時に、“誰かが理解してくれることの救い”を感じたい人

『夜明けのすべて』配信・購入情報

配信

DVD・Blu-ray・原作本

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※各サイトの配信状況、価格、在庫状況は時期によって変わることがあります。最新の情報は各リンク先にてご確認ください。

🎬『夜明けのすべて』作品情報・キャスト

2024年製作/119分/G/日本
配給:バンダイナムコフィルムワークス、アスミック・エース
劇場公開日:2024年2月9日
監督:三宅唱
原作:瀬尾まいこ
脚本:和田清人 三宅唱
キャスト:
山添孝俊・松村北斗
藤沢美紗・上白石萌音
辻本憲彦・渋川清彦
大島千尋・芋生悠
岩田真奈美・藤間爽子
久保田磨希、足立智充
宮川一朗太、内田慈
丘みつ子、山野海
斉藤陽一郎、
藤沢倫子・りょう
栗田和夫・光石研
受賞歴:
第48回 日本アカデミー賞(2025年)
受賞:優秀作品賞、優秀監督賞・三宅唱、優秀主演女優賞:上白石萌音

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この記事を書いた人

映画と暮らしの中の “ちょっといいもの” を綴るブログ。

映画好きの二児の母。アラフォー/首都圏在住。

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