本作は、見方によっては少々イタく感じる親子ですが、
その不器用さこそがリアルで胸に刺さりました。
似た者同士の親子を通して、家族の距離感について改めて考えさせられる一本です。
『僕らの世界が交わるまで』あらすじ
DV被害者のためのシェルターを切り盛りする母エヴリン(ジュリアン・ムーア)と、
ネット配信で人気を集める高校生ジギー(フィン・ウォルフハード)。
社会のために奔走する母と、
フォロワーの反応ばかり気にする息子は、
価値観がすれ違い、互いの気持ちが見えなくなっている。
自分にないものを持つ相手に惹かれ、
必死に近づこうとするものの、どこか噛み合わない。
気づけば、迷いながらも前に進もうとする“よく似た親子”の姿が浮かび上がっていく。
『僕らの世界が交わるまで』作品紹介
『ムーンライト』や『ミッドサマー』、
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』など、
いま最も信頼される映画スタジオA24が手がけた最新作。
『ソーシャル・ネットワーク』でFacebook創業者のマーク・ザッカ―バーグを演じた、
ジェシー・アイゼンバーグの初監督作品です。
母エヴリンを演じるのは名優ジュリアン・ムーア。
息子ジギー役には『ストレンジャー・シングス』で人気のフィン・ウォルフハードが出演し、
劇中の楽曲も自ら手がけています。
さらに、アイゼンバーグの盟友であるエマ・ストーンが
プロデューサーとして参加していることでも話題を集めました。
『僕らの世界が交わるまで』感想・考察
ジギーの“痛さ”が際立つ理由
『僕らの世界が交わるまで』を観てまず感じたのは、ジギーという少年の“ちょっとイタい”部分でした。
ライブ配信に夢中で、フォロワーが2万人いることを誇らしげに語る一方、気になるクラスメイトのライラ(アリーシャ・ボー)にはまったく相手にされない。政治の話ばかりするライラに近づこうと必死なのに、興味も知識もないから会話が噛み合わない。その空回りぶりが、見ていて痛々しく感じてしまいました。
母エヴリンの善意が暴走する瞬間とは
一方で、母エヴリンもまた”別の意味でイタい人物”でした。
DV被害者のためのシェルターを運営する彼女は、
最近保護された女性と、特にその息子カイル(ビリー・ブリック)に過剰なほど世話を焼いてしまいます。
夕飯の残り物をおすそ分けしようとしたり、
行きつけの店に連れて行ったり、
ボランティアに誘ったり…。
特に、カイルの進学先を勝手に探し、
母親が望んでいないと知ると高校まで押しかけて説得しようとする場面は、
善意が暴走して“イタい”を通り越していました。
ジュリアン・ムーア&フィン・ウォルフハードの名演
結局この親子は、価値観こそ違えど似た者同士。
ジュリアン・ムーアとフィン・ウォルフハードが好演していました。
エヴリンの善意は本物なのに、
向けられた側は重く感じてしまう。
その距離感のズレが怖いほどリアル。
同じように、ジギーもライラとの距離を見誤り、
相手の気持ちに気づけないまま突き進んでしまう。
その“無自覚な怖さ”をフィンが見事に演じていました。
似た者同士の親子が抱えるすれ違い
また、お互いが自分の気持ちしか目を向けられない時、
親子の間にはどうしてもすれ違いが生まれてしまいます。
一つ屋根の下に暮らす家族でも、ただただ自分中心になってしまう。
その様がとても上手に描かれていました。
気になる、無口な父親という存在
そして、この家族にはもう一人、
ジギーの父親(ジェィ・O・サンダース)が出ています。
いつも何か読み物を読んでいて口数が少なく、
ジギーが、母が残業で帰宅していないことには気づいても、
父が家にいることには気づかず話しかけられてびっくりするシーンもあったほど。
こういう自我が強く主張の激しい妻子に挟まれてそうなったのか、
もともとの性格なのかが何気に気になる存在でした…
善意と距離感の難しさ、価値観のすれ違いを描いたリアルな物語
善意や好意が独りよがりになってしまう。
大なり小なり、誰にでもそういう“勘違い”があるかもしれない。
本作から、相手の気持ちを想像することの大切さを改めて考えさせられました。
自分の想いだけに意識が向いてしまうと、
相手はついていけなくなるものですもんね…
無関心に慣れる前に気づきたい家族の距離感
そんな“自分中心”な言動が痛々しく映る一方で、
親子のすれ違いについても深く考えさせられました。
こうしたすれ違いは、どこの家庭にも起こりうることなのかもしれません。
我が家はまだ子どもが小さいので今は違うけれど、
子どもが成長していけば、価値観のズレや会話の噛み合わなささはきっと出てくるはず。
実際、筆者と夫の間でも、仕事や親のこと、興味のある話題が違うだけで、
うまく噛み合わなかったり、お互いに無関心になってしまう瞬間があります。
きっかけが何であれ、そのままでは良くないんですよね。
忙しさや余裕のなさでベクトルが別方向を向いていても、
一緒に暮らす家族に少しでも興味を向けることは大事だと、
この映画を観て改めて感じました。
無関心に慣れてしまう前に気づけてよかった…と思う自分もどうかと思いつつ、
これからはもっと意識していきたいです。
頑張ります。
memo.
忙しさで見落としがちでも、家族へ目を向けることは大事
まとめ|『僕らの世界が交わるまで』がくれた気づき
『僕らの世界が交わるまで』は、善意や好意ですら、ときに相手との距離を見誤ってしまう──
そんな人間関係の難しさを、リアルに映し出した作品でした。
分かり合いたいのに噛み合わない。
近づこうとするほど、すれ違ってしまう。
その不器用さが、どこか他人事ではなく感じられる。
だからこそ、観終わったあとに少しだけ立ち止まりたくなる。
家族との距離や、相手を思う気持ちの向け方について
考えたくなるような、心に残る一本です。
🌿こんな人におすすめ
- 家族とのすれ違いや距離感に、少し共感したい人
- 人間関係の“うまくいかなさ”をリアルに感じたい人
- ミニシアター系の静かな作品が好きな人
- 派手さよりも、会話や空気感を楽しみたい人
- 観終わったあと、じんわり余韻に浸りたい人
『僕らの世界が交わるまで』配信・購入情報
【配信で観る】
【Blu-ray・DVDを購入する】
※配信は、状況によって変わることがあります。
『僕らの世界が交わるまで』作品情報・キャスト
製作国:アメリカ
製作年:2022年(日本公開:2024年)
上映時間:88分
レーティング:G
原題:When You Finish Saving the World
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
監督:ジェシー・アイゼンバーグ
キャスト:ジュリアン・ムーア、フィン・ウルフハード、アリーシャ・ボーほか
受賞・選出:サンダンス映画祭 ワールドプレミア、カンヌ国際映画祭 批評家週間オープニング作品
🔗関連記事
こちらもおすすめです
コメント