本作は、夏のパリを舞台に、どこか気だるい音楽とおしゃれな街並みが最高にマッチした大人のための極上の1本。「ながら見」でも心地よくその世界観に浸れる、不思議な魅力に満ちています。
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ハリウッドの売れっ子脚本家でありながら、小説家への夢を諦めきれないギルは、婚約者のイネズとその家族と共にフランス・パリへ旅行にやってくる。
ある真夜中、パリの街をひとり彷徨っていたギルの前に、クラシックなアンティークカーが停車する。誘われるがままに車に乗り込んだギルが迷い込んだのは、自分がずっと憧れていた「1920年代の黄金期」のパリだった――。
🎥公式予告動画
🗼 映画『ミッドナイト・イン・パリ』ネタバレ感想・レビュー
1. 気だるい音楽と、おしゃれなパリの街並み
本作を初めて観たときにまず魅了されたのが、その独特で心地よい「空気感」です。
冒頭から流れるクラシカルで、どこか気だるいジャズ音楽。実は監督のウディ・アレンは大のジャズマニアとして有名で、自身もクラリネット奏者として毎週ステージに立つほどの腕前です。そんな彼の並々ならぬジャズ愛が詰まった選曲が、美しくおしゃれなパリの街並みにこれ以上ないほどマッチしています。
がっつり身構えて観るというよりは、おうちで贅沢に「ながら見」をしながらでも、あのオシャレな雰囲気に心地よく浸れてしまう。そんな極上の癒やしを与えてくれる一本です。
2. ヘミングウェイにピカソ!豪華すぎる偉人キャストたち
深夜0時、夜な夜なタイムスリップする先で出会うのは、教科書や美術館でしか見たことのない本物のレジェンドたち!
ヘミングウェイやピカソ、ダリ、さらには『グレート・ギャツビー』の著者フィッツジェラルド(アベンジャーズのロキ役でお馴染みのトム・ヒドルストンが、知性溢れる最高に紳士なタキシード姿で好演しています!)といった、名だたる画家や小説家が次々と登場します。
この贅沢な偉人たちに初対面したときの、主人公ギルの「ええっ!?」という目をまん丸くするリアクションがとにかくおもしろいんです。「絶対自分もタイムスリップしたらそういうリアクションになるだろうな」というお決まりの姿を、そのまま劇中でやってくれているような楽しさがあります。
3. 可愛いけれど……価値観が決定的に違った婚約者との結末
偉人たちとのファンタジーな出会いと並行して描かれるのが、現実世界の婚約者・イネズとの関係です。彼女ははたから見ていて本当に可愛いのですが、観進めるうちに「いや、この2人、絶対合わないな……」と思って観ていました。
旅行中に合流した、インテリ気取りで鼻につく友人カップルの男(ポール)のうんちく話に、ギルはうんざりしているのにイネズはうっとり。おまけに、はたから見ていても絶対に合わないと思っていた通り、結果的にイネズは裏でその友人と浮気までしていました。案の定、価値観の違いから2人の結婚は破談になります。
でも決してバッドエンドではなくて、ギルが自分の本当の価値観に気づくための、必然の結末だったのだと思いました。
4. 批評家スタインの言葉に鳥肌!ギルにとって「夢がありすぎる」奇跡の時間
そんな嫌な(イネズの)友人にマウントを取られ、実は婚約者には浮気されているという最悪な現実の一方で、夜のタイムスリップは、小説家を目指して執筆に悩むギルにとってこれ以上ないほど夢がありました。
自分が憧れてやまない伝説 of 伝説の文豪たちに直接会えるだけでも大興奮なのに、当時の文学界のボスである大物批評家、ガートルード・スタインに、自分の書いた原稿を直接読んでもらえるなんて本当にロマンがありすぎますよね。絶対自分もギルと同じように、興奮して目がキラキラしてしまうはず……!
そして劇中、ギルの原稿を読んだスタインから「とても異色ね。空想科学小説(SF)を読むようだわ。快活な文体よ」と評価されます。
本物の天才にその才能を認められて自信をもらったギル。さらに後日、彼女の部屋を訪れたギルは、”ヘミングウェイから小説に1つ指摘があって『主人公が婚約者の浮気に気づいていないのはリアリティに欠ける』と。あの知識人ぶった男(ポール)とよ”と。
文学界のレジェンドたちが、小説のプロット(=ギル自身の現実)に対して放ったあまりにも鋭い突っ込み。これによって、現実世界でのイネズの裏切りにギルがハッと気づかされる展開がお見事すぎました。
5. 天才たちを虜にした美女・アドリアナの正体と、ギルの必死なドタバタ劇
そして、ギルが作中で恋に落ちる美しい女性・アドリアナの存在も、ギルにとってはロマンチックな展開で。
アドリアナは、ピカソのミューズ(愛人)でありながら、その前にはモディリアーニの恋人でもあり、ヘミングウェイとも浮き名を流すという、1920年代の天才芸術家たちを次々と虜にした魔性の美女という役どころ。
後に現代の本屋でアドリアナの古い日記を見つけ、「ギルに恋をしていて、イヤリングを贈られる夢を見た」と書かれているのを知ったギルが、大慌てで彼女のためにイヤリングを用意するも、新しく買うお金がないからと、婚約者(イネズ)のイヤリングをこっそり盗んでプレゼントしようとするという姿は笑えました。
しかもタイミング悪くイネズが部屋に戻ってきてバレそうになり、必死に言い訳して焦るギル(笑)。結局、代わりに新しいイヤリングを買って過去に持っていくギルの健気さ(と調子の良さ)も人間味があって憎めません。
6. 爆笑!ダリたちのリアクションと、パパが放った「探偵」の哀れな結末
もう一つシュールな笑いと言えば。
個人的にクスッと笑えて大好きなのが、ギルを怪しんだイネズの父親が放った探偵(タディエ警部)の結末。
彼もギルを尾行するうちにタイムスリップしちゃうんですよね。しかも、消えた先はギルがいた1920年代よりもさらに昔(ルイ16世やマリー・アントワネットがいた、フランス革命直前のベルサイユ宮殿)!
豪華絢爛な宮殿に迷い込んだ現代の探偵が、当時の近衛兵たちに見つかって「首をはねよ!」と全力で追いかけ回されるコミカルなオチは最高でした。
🎬 まとめ|『ミッドナイト・イン・パリ』がくれた気づき
◆ さらに昔へタイムスリップ!著名人たちとの遭遇で見えたもの
物語の終盤、ギルとアドリアナは馬車に揺られて1920年代よりもさらに昔の1890年代へとタイムスリップします。アドリアナにとってはそこが「黄金時代」だったのですが、そこで訪れたムーラン・ルージュでは、さらに昔の著名な画家ゴーギャンやドガたちが登場し、「最高の時代はルネサンスだ」と言い始めるのです。
- 現代のギルは、ヘミングウェイたちの1920年代に憧れ
- 1920年代のアドリアナは、ゴーギャンたちの1890年代に憧れ
- 1890年代のゴーギャンたちは、ダ・ヴィンチたちのルネサンス時代に憧れている
人間はどの時代に生きても、常に「今(現在)」に満足できず、過去を羨む生き物なのだと言うことを目の当たりにします。
◆ なぜギルは過去ではなく「今」を生きる決断をしたのか
憧れの芸術家たちが「過去」に焦がれている姿を見たギルは、過去へのノスタルジーを追い求めるのは無駄だと気づき、過去に留まることを決めたアドリアナと別れ、現代に戻る決断をします。そして現実世界で浮気を認めたイネズと別れ、パリに残ることを決めます。
過去の時代へのノスタルジーを愛おしみつつも、最後はしっかりと自分の足で、「今」を歩き出すギルの姿は、ある意味爽快でした。
◆ 同じ価値観をもつ相手とのラストシーン
映画の最初からずっと描かれていた、ギルの「雨のパリを傘もささずに散歩するのが最高にロマンチック」というマニアックな価値観。これは元婚約者のイネズには「服が濡れるし最悪」と完全に切り捨てられ、2人の決定的な価値観のズレを表していました。
ラストで、真夜中のセーヌ川を歩くギルの前に、アンティークショップで働いていたガブリエルと偶然再会します。
背景にはキラキラ光るエッフェル塔。ギルが「家に帰る途中だよね一緒にいい?コーヒーでもおごるよ」と声をかけたところで、雨が降り始めます。「パリは雨が一番ステキなの」だと言うガブリエルと一緒に傘もささずに雨の中を歩いていく素敵なラストでした。
過去へ誘う車はもう現れません。彼が「今」を生きる覚悟を決めたから。自分と本当の意味で価値観の合うパートナーに現実で出会えた、胸キュン(死語)必須の素敵シーンでした。
個人的には雨に濡れたくないのは普通のことで、雨に濡れて散歩する方が「えぇっ⁉」って思っちゃいます。だからこそ、そこがぴったり合う2人は奇跡に近いような感覚になりました。
しかもガブリエルは、ギルが過去の世界で聴いて印象的だった「コール・ポーター」の古いレコードを扱う店で働いていた女性。この音楽を介した出会いという最高な伏線があったからこそ、雨の価値観だけでなく、共通の話題も含めてもう恋が始まる要素しかないですよね。2人の会話を聞いていると、雨のパリを散歩するのは恋愛の始まりとして最高すぎるなと、自分の考えも180度変わったのでした。(むしろ歩きたい!)
本作から、ないものねだりをしたり背伸びするよりも、腹をくくって今いる場所で自分らしく生きることが、自分に合う人やモノや価値と出会えるのでは、そんな風に思えた一本でした。
💡『ミッドナイト・イン・パリ』はこんな人におすすめ
- パリのおしゃれな街並みや、どこか気だるいジャズ音楽にうっとり癒されたい人
- おうちで贅沢に「ながら見」できる、心地いい雰囲気の映画を探している人
- ヘミングウェイやピカソなど、歴史上の天才たちとのロマンある「夢のような時間」を体験してみたい人
- 「昔は良かったな…」と、ついついないものねだりをしてしまう人
- 背伸びをするのをやめて、腹をくくって「今いる場所」で自分らしく生きたい人
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『ミッドナイト・イン・パリ』作品情報・キャスト
🎬 『ミッドナイト・イン・パリ』作品情報
・製作年:2011年(劇場公開日:2012年5月26日)
・上映時間:94分
・製作国:スペイン・アメリカ合作
・監督・脚本:ウディ・アレン
・主な受賞歴:第84回アカデミー賞 脚本賞 受賞、第69回ゴールデングローブ賞 最優秀脚本賞 受賞
👥 豪華キャスト・登場人物一覧
現代:ギルを取り巻く「現実世界」の人々
- ギル・ペンダー役:オーウェン・ウィルソン
- 役柄:主人公。小説家を目指して執筆に悩む脚本家。
- ここに注目!:ハリウッドのコメディ映画(『ナイト ミュージアム』シリーズのミニチュアのカウボーイ役など)でお馴染みの彼が、今作ではウディ・アレン監督の分身とも言える「偏屈だけど愛すべきインテリ男」をどこか情けなくも魅力的に演じています。
- イネズ役:レイチェル・マクアダムス
- 役柄:ギルの可愛いけれど、超現実主義で価値観の合わない婚約者。
- ここに注目!:『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』や『きみに読む物語』など、恋愛映画の王道ヒロインとして世界中で愛される彼女。今作ではその愛らしさをあえて「イラッとするワガママお嬢様」の演技に昇華させているのが見事です。
- ポール役:マイケル・シーン
- 役柄:インテリ気取りで鼻につくイネズの友人。
- ここに注目!:ドラマ『グッド・オーメンズ』の天使役などで知られる実力派。今作では、ワインから美術まで何にでもマウントを取ってくる「そばにいたら一番ウザい男」を完璧に怪演しています。
- ガブリエル役:レア・セドゥ
- 役柄:パリの蚤の市にあるアンティークショップの女性。
- ここに注目!:『007』シリーズのボンドガールや『アデル、ブルーは熱い色』で世界を魅了したフランスの名女優。ほんの少しの登場ながら、ギルと「雨のパリ」というマニアックな価値観を共有できる運命の相手として、圧倒的な透明感を放っています。
過去:夜のパリで遭遇する「レジェンド」たち
- コール・ポーター役:イヴ・ヘック
- 役柄:タイムスリップしたギルが最初に出会う、天才作曲家。
- ここに注目!:ギルが迷い込んだ最初のパーティーで、名曲「Let’s Do It」をピアノで弾き語りしている人物。ジャズ・スタンダードの神様である彼の音楽が流れた瞬間、観客も一気に1920年代の華やかな世界へと引き込まれます。
- アドリアナ役:マリオン・コティヤール
- 役柄:1920年代のパリで、ピカソやヘミングウェイを虜にする魔性の美女。
- ここに注目!:『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』でアカデミー主演女優賞に輝いた、フランスが誇る至宝。クラシカルなドレスを着こなす彼女のエキゾチックな美しさは、ギルだけでなく観客全員が「これは恋に落ちてしまう…」と納得する説得力があります。
- F・スコット・フィッツジェラルド役:トム・ヒドルストン
- 役柄:名作『グレート・ギャツビー』の著者。妻ゼルダとともに1920年代のパリで暮らしています。
- ここに注目!:マーベル映画(MCU)のロキ役で世界的大人気となった彼が、知性あふれる最高に紳士なタキシード姿で好演。妻ゼルダとの関係に悩まされる姿もコミカルで、普段のロキとはまた違った魅力を見せています。
- アーネスト・ヘミングウェイ役:コリー・ストール
- 役柄:『老人と海』などで知られる、男気溢れる不器用な文豪。
- ここに注目!:映画『アントマン』の悪役イエロージャケット役など幅広く活躍する実力派。常に「戦い」や「死」について熱く語る、ストレートで男臭いヘミングウェイ像をコミカルかつ印象的に演じています。
- ガートルード・スタイン役:キャシー・ベイツ
- 役柄:ギルの小説に太鼓判を押し、現実の浮気を指摘する文学界のゴッドマザー。
- ここに注目!:『ミザリー』の狂気的な演技でオスカーを受賞し、『タイタニック』でも不沈のモリー役を演じた大ベテラン。圧倒的な包容力と鋭い洞察力で、迷えるギルを導く重要なメンターを演じています。
- サルバドール・ダリ役:エイドリアン・ブロディ
- 役柄:ギルの未来人説をあっさり信じる、シュルレアリスト(超現実主義)の巨匠。
- ここに注目!:『戦場のピアニスト』で最年少(当時)アカデミー主演男優賞を獲得した天才俳優。今作では、何を話しても「サイ(犀)が見える!」と一点張りの狂気的なダリを、爆笑必至のハイテンションで演じています。
- 美術館ガイド役:カーラ・ブルーニ
- 役柄:ロダン美術館の親切なガイド女性。
- ここに注目!:トップモデル・歌手であり、なんと元フランス大統領(サルコジ氏)の夫人でもあるという、パリの本物のセレブリティ。映画の「おしゃれで贅沢な空気感」をさらに高めるカメオ出演です。
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✨ 本作が好きなあなたへ:もうひとつの「パリの名作」
過去への憧れと、今を生きることの愛おしさを描いた『ミッドナイト・イン・パリ』。この「人生の愛おしさ」というテーマが響いた方には、映画『パリタクシー』が刺さるはずです。
過去の思い出の地を巡るドライブを通して、不器用な運転手と老婦人の心が通じ合っていく物語。美しいパリの夜景と共に描かれる、人生のビタースイートな味わいは、本作の読後感にも通じるものがあります。
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