1998年に韓国映画史に残る不朽の名作として公開された『八月のクリスマス』。その切なくも美しい空気感をそのままに、2005年に山崎まさよしさん主演でリメイクされたのが日本版『8月のクリスマス』です。
オリジナル版のファンとしては「イメージが台無しになったら嫌だな……」と恐る恐るの鑑賞でしたが、とんでもない。日本の美しい風景と独自のキャラクター解釈が光る、非常に見事な良作でした。
今回は、日本版ならではの魅力やロケ地情報、そして韓国オリジナル版との設定の決定的な違いについて深く掘り下げてレビューします。👉韓国版はこちらから
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富山の静かな町で写真館を営む寿俊(山崎まさよし)は、不治の病に侵され、自らの命が残り少ないことを知りながらも、ギターを趣味にしながら淡々とした日々を送っていた。そこへ、近くの小学校の臨時教員である由紀子(関めぐみ)がやってくる。
現像の用事で写真館を訪れる由紀子と、たわいもないおしゃべりを交わすうちに、少しずつ距離を縮めていく二人。しかし、無情にも寿俊の病状は悪化していき、ある日突然、写真館の扉は閉ざされてしまい……。
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『8月のクリスマス』見どころ
- 富山県高岡市の情緒あふれる美しいロケ地
どこか懐かしい実家感、古い町並み、そして静かに降る雪の映像美が、作品全体の切なさをより引き立てています。 - 日本版独自のヘビーなキャラクター設定
単なる焼き直しではなく、登場人物の背景に日本版独自のビターなひねりが加えられており、物語に異なる深みを与えています。
『8月のクリスマス』感想&オリジナル版とのキャラクター比較
韓国版のハン・ソッキュが演じたジョンウォンは、死を前にしながらも「普段は穏やかで明るい優しい笑顔」を浮かべており、だからこそ一人きりの悲しみのシーンでの“引き算の演技”が強烈に刺さる魅力がありました。これには本当に参りました。
それに対して、日本版の山崎まさよしさんが演じた寿俊は、ミュージシャン独特の繊細さもあり、どこか最初から全体的に「暗さ(陰)」が前に出ている印象です。また、趣味にアコースティックギターが追加されているのも彼ならではの設定でした(ファンとしては、劇中で弾き語りをしてほしかった!という名残惜しさもありますが、エンディングで流れる主題歌は一層切なく胸に響きます)。
ヒロインの由紀子(関めぐみ)についても、韓国版のシム・ウナが見せた、あどけなさ、無邪気さ、時にはドキッとさせるような小悪魔的で多角的な魔性に比べると、日本版は小学校の先生という職業設定もあってか、少しきつそうで生真面目、頑な(かたくな)な印象を受けました。
主役の二人がこのように少し重く暗めのトーンに寄っていたからこそ、妹役の西田尚美さんの持つ明るさが光っていたように思いました。
また、言葉は少なくても淡々とした背中で語る、父親役の井川比佐志さんの佇まいも本当に素晴らしく、日本版ならではの「家族の温かさ」が描かれていてよかったです。
日本版と韓国版の主な違い
本作は韓国のオリジナル版をベースにかなり忠実に作られていますが、細部を観比べると以下のような明確な違いがあります。
- ヒロインの職業と出会い方
韓国版のタリムは「駐車違反の取締員」で街中で出会いますが、日本版の由紀子は「小学校の臨時教員(先生)」に変更されており、出会いのシチュエーションも学校周辺が舞台になっています。 - 写真館での鉢合わせシーン(日本版オリジナル)
元恋人が寿俊のもとを訪れ、写真館で重苦しい話をしている真っ最中に、ヒロインの由紀子が「ごめんくださーい!」と元気よく割って入ってきます。由紀子が二人の関係を察して不機嫌になるなど、リアルな恋の空気感が描かれています。 - 主人公が泣くシーンの演出
○韓国版(お父さんの布団にもぐりこむ):
自分の死を前にした恐怖や寂しさを、幼い子どものように「お父さんの温もり」に頼ることで表現しています。「残される父親との言葉にできない絆と切なさ」が際立つ演出です。
○日本版(一人で布団をかぶって声を押し殺して泣く):
お父さんの布団に行くのではなく、自分の部屋の布団の中で一人で悲痛な涙を流します。お父さんに心配をかけまいとする、あるいは孤独を一人で背負おうとする、「日本版の主人公の、より内省的で深い『陰(暗さ)』と孤独」が際立つ演出です。 - 主人公の死後、冬に写真館を訪れるヒロインの描写
どちらも冬の日のラストシーンですが、ヒロインの行動に違いがあります。韓国版のタリムは手ぶらで訪れますが、日本版の由紀子は寿俊を追悼するために花を持って写真館を訪れます。 - 最大の決定的な違い:ラストの手紙
韓国版の手紙は写真館に遺されたままで、タリムがそれを読んだのかは観客の想像に委ねられます。しかし日本版では、主人公の死後に手紙が消印付きの郵送で由紀子の元へしっかりと届き、彼女がそれを読んで涙を流すというはっきりと完結する結末が描かれています。
🗺️ 舞台となった富山県高岡市・ロケ地紹介
日本版のあのどこか懐かしく、温かい「実家感のある軒先」や美しい町並みは、富山県高岡市を中心に撮影されました。
メインロケ地となった高岡市の「金屋町(かなやまち)」は、千本格子の美しい古い家並みが残る歴史的な地域です。日本情緒が漂う静かな町に、物語の終盤で白く降り積もる雪のコントラストは、映像美として本当に見事でした。
映画が公開された当時(2005年)は、高岡駅などで公式の「ロケ地ガイドマップ」が配布され、山崎まさよしさんのファンを中心に大々的な聖地巡礼ブームが起きたそうです。
劇中の「鈴木写真スタジオ」のロケセットは、撮影後も期間限定の記念館として一般公開され、劇中の衣装やバイクが展示されて多くのファンで賑わい、ロケ地となった地元の居酒屋では、巡礼に訪れるファンのために特別メニューが提供されるなどしたとか。映画の世界観にそのまま浸ることができるため、今でも大切なロケ地として映画ファンに愛され続けています。
まとめ|はっきりと描かれる結末の良さ
韓国版のラストは「手紙を読んだのか分からない、余白を残したあの切ない笑顔の余韻」が魅力でした。
それに対して日本版は、主人公の死後に手紙が実際に学校宛てに郵送で届き、ヒロインの由紀子が手紙を読んで涙を流すという明確な結末が描かれます。
感情が明確に完結する日本版だからこその、物語としての美しい救いと満足感がありました。韓国版の二人の空気感も素晴らしいですが、富山の美しい景色の中で描かれる日本版の良さと、胸に染み渡る山崎まさよしさんの歌声も、また違った味わいがある至高のリメイク作です。
自分はどっちが好きか考えてみましたが、やっぱり韓国版の結末の余韻と主演の演技がよかったです。とは言え日本版は映像美とノスタルジーを感じるところと、山崎まさよしさんのエンディングの歌声もとてもとてもよかったです。どちらもそれぞれの魅力が詰まった名作ですので、ぜひ両方を観て見比べてみることをおすすめします。
🌿こんな人におすすめ
- 日本の情緒ある美しい風景や、雪景色のロケ地を楽しみたい人
- 家族の温かさや、日常の切なさを丁寧に描いた邦画が好きな人
- 山崎まさよしさんの音楽や、アコースティックな雰囲気が好きな人
- オリジナル版をリスペクトしつつ、日韓の細かな演出や結末の違いをじっくり観比べたい人 [1, 2, 3]
『8月のクリスマス』配信・購入情報
配信
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日本版『8月のクリスマス』の大きな魅力である、山崎まさよしさんが手掛けた美しく切ないアコースティックな音楽。あの感動的なエンディング主題歌や劇中を彩る名曲をじっくりと聴き込みたい方には、オリジナル・サウンドトラックがおすすめです。
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『8月のクリスマス』作品情報・キャスト
2005年製作/103分/日本配給:東芝エンタテインメント劇場公開日:2005年9月23日
監督:長崎俊一
脚本:長崎俊一
音楽:山崎まさよし
キャスト:鈴木寿俊・山崎まさよし
高橋由紀子・関めぐみ
宮田亮二・大倉孝二
佳苗・戸田菜穂
記念写真の老婦人・草村礼子
純子・西田尚美
鈴木雅俊・井川比佐志
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