本作は、間違って持って帰ってきた友だちのノートを、
家も知らない友だちに返すために主人公がただひたすら奔走するというシンプルな物語。
でも、ひとりの少年が友だちのために走り続ける姿が、
とても健気で深く心に残ります。
観終わったあと、胸の奥が少しだけ痛くなって、
でも温かさも同時に残る、そんな映画でした。
『友だちのうちはどこ?』あらすじ
『友だちのうちはどこ?』 は、イラン北部の小さな村を舞台にした物語である。
少年アハマッドは、同級生モハマッドのノートを誤って持ち帰ってしまう。
ノートがなければ退学になるかもしれないと知り、アハマッドは返そうと決意する。
隣村にある友だちの家を探して、入り組んだ道や坂道を何度も行き来しながら歩き回るが、
大人たちはなかなか力を貸してくれない。
不安と焦りを抱えながらも、少年はあきらめずに探し続ける。
『友だちのうちはどこ?』見どころ
本作 は、イランの名匠アッバス・キアロスタミが1987年に発表した長編映画です。
イラン北部のコケール村を舞台に、ひとりの少年の小さな冒険を描いた作品で、
キアロスタミ監督の名を世界に知らしめました。
本作の大きな特徴は、
職業俳優を使わず、実際の村人や子どもたちを起用している点です。
実在の家や学校で撮影され、
フィクションでありながらドキュメンタリーのようなリアリティを生み出しています。
イランの素朴で美しい風景と、少年の不安や焦り、
そして友だちを思うまっすぐな気持ちが重なり、
観る者の心に深い余韻を残します。
派手な出来事はありませんが、
「約束を守ること」
「他者を思いやること」
という普遍的なテーマが語られます。
国や文化を越えて共感を呼び、今なお世界中で愛され続けている名作です。
なお本作は、
のちに制作された
「そして人生はつづく」
「オリーブの林をぬけて」
とあわせて「コケール三部作」とも呼ばれています。
『友だちのうちはどこ?』感想
何はなくとも子役のアハマッド少年がとにかく友だち想いで健気で、
胸がぎゅっと締めつけられます。
長いまつ毛とつぶらな瞳が、より健気に見せるんです…。
ノートを返さなければ友だちが退学させられるかもしれない──
その一心で、あっちこっちを走り回る姿に、
子どもが持つ純粋な正義感に、胸が締め付けられます。
また、大人のように理不尽や惰性に慣れていない子どもは、
真実をまっすぐに見つめられる。
そのこともまた、本作から痛感します。
少しだけ自分の生活に置き換えてみました。
仕事や家事、人間関係のあれこれに気を取られていると、
子どもの「ママ、○○だよ」という何気ない一言を、つい流してしまいそうになります。
でも、それは子どもにとっての発見や気づきで、
世界を広げる大切な瞬間なんですよね。
子どもに対してきちんと向き合う時間は改めて大事だと、
この映画を観て背筋が伸びました…!
それにしても、いってみればただ友だちのノートを返すというだけの話なのに、
壮大なストーリーとなり、派手さはなくとも心に深く響く感動を呼ぶ。
それこそがこの映画の素晴らしさなんです。
監督が映し出した世界や彼が遺した作品には、
国や文化を越えて、人が人を思う気持ちの尊さが描かれていました。
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『友だちのうちはどこ』考察
ここから少し本作を考察してみたいと思います。
子どもたちの“演技ではない”存在感
キアロスタミ監督は職業俳優ではなく、実際に村で暮らす子どもたちを起用しました。
劇中で親友同士を演じたのは、現地の兄弟。
兄ババクがアハマッドを、弟アハマッドがモハマッド=レザを演じています。
だからこそ画面に映るのは「演技」ではなく、
そのままの生活の延長にある振る舞い。
どこまでが演出で、
どこまでが自然なのか分からなくなるほどのリアリティが、
物語への没入感を高めています。
ドキュメンタリー的手法が生むリアリティ
さらに実際の村、実際の子どもたち、実際の生活。
フィクションでありながら、ドキュメンタリーのような質感があるのは、
監督の演出が生活そのものを尊重しているからなのだと感じます。
カメラの少年の歩幅に合わせて進む、そのゆっくりとしたリズムもまた、
自然と物語の中へ引き込まれます。
また、当時のイラン北部ののどかな風景。
乾いた土の色、
風に揺れる木々、
子どもたちの息づかい──
どれも特別な演出ではないのに、
心に深く残るのはドキュメンタリーさながらの本物を描いているからだと思いました。
キアロスタミ監督が映し出す世界は、
技術や装飾がどれだけ進化しても、
生活そのものの美しさには敵わないのだということを改めて思わせられます。
大人たちの理不尽さ
そして、この映画に登場する大人たちは、とにかく理不尽。
自分の都合で子どもを手伝わせたり、ノートを取り上げたり、怒鳴ったり。
おじいちゃんは「げんこでしつけるべきだ」と語り、
母親も「宿題しなさい」と言いながら家事を手伝わせる。
アハマッドは大人のように言いたいこともうまく伝えられないし、
要領もいまいちで、道にも迷う。
大人の世界の矛盾や不条理が、
子どもの視点から見るとこんなにしっかりと理不尽なのだと、
改めて感じました…。(本当にひどいくらいに)
そうして大人たちの理不尽さに屈しそうになりながらも、
アハマッドは友だちのために行動し続けます。
監督は子どもを未熟な存在ではなく、むしろ大人より誠実な存在として描いてたように思いました。
観終わった後の、胸の痛みと希望
住所も知らない遠くの友だちの家を一人一生懸命探し続け、日が暮れてしまう。
帰宅しても食事が喉を通らず、夕飯も食べずに宿題をするアハマッドの姿は、
胸が締め付けられました。
そして、彼の友だちを想う優しい心が、ラストに向けて希望となります。
ラストシーンに込められた約束の倫理
アハマッドが最後に見せる行動は、単に「ノートを返す」という目的を超えていました。
それは、子どもが自分の力で友だちを守ろうとする、
「約束を守ること」「他者を思いやること」という普遍のテーマ。
大人の都合や社会の理不尽さにまいりそうになりながらも、
彼は自分の信じる正しさを貫きます。
それが感動につながるのだと思いました。
押し花・花が象徴するもの
作中で印象的に登場する押し花。
それはただ「きれいなもの」としてではなく、どこか意味を帯びているように感じました。
押し花は、美しくてかわいらしい。
けれど同時に、とても壊れやすい存在でもあります。
そのあり方は、まるで子どもそのもの。
小さくて、純粋で、まっすぐで。
だからこそ繊細で、少しのことで傷ついてしまう。
押し花は、そんな子どもたちの姿や、
私たちのもつ守るべき存在としてのイメージを
象徴しているように思えました。
memo.
子どもの健気さ、小さな声をしっかり見つめたい
まとめ|『友だちのうちはどこ?』がくれた気づき
時代の変化の早い現代社会において、
子どもたちの笑顔や、
乾いた土の匂い、
石造りの家々、
細い坂道──
本作に映っていた風景を思い返すと、ますます愛おしさが増していくように思います。
キアロスタミ監督が生涯をかけて描いた、
生活の手触りそのものの美しさや、
子どもたちの世界に宿るまっすぐな真実が、
これからも受け継がれていきますように…と願わずにはいられません。
🌿こんな人におすすめ
・静かで余韻のある映画が好きな方
・子どもの視点で描かれる物語に心惹かれる方
・大きな出来事がなくても心に残る作品を観たい方
・日常の中にあるやさしさや誠実さを感じたい方
・映像や空気感をじっくり味わう映画が好きな方
『友だちのうちはどこ?』配信・購入情報
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『友だちのうちはどこ?』作品情報
製作年:1987年(日本公開:1993年)
製作国:イラン
上映時間:83分
原題:Where Is the Friend’s House?
配給:ユーロスペース
監督:アッバス・キアロスタミ
脚本:アッバス・キアロスタミ
出演:ババク・アハマッド・プール、アハマッド・アハマッド・プール、ホダ・バフシュ・デファイ、イラン・オタリほか
受賞・選出:
・ファジル国際映画祭(英語版)最優秀監督賞(キアロスタミ)審査員特別賞
・ロカルノ国際映画祭(キアロスタミ)銅豹賞、FIPRESCI賞特別賞、エキュメリック審査員賞特別賞
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