言わずと知れた不朽の名作『若草物語』を、現代的な視点でみずみずしくリメイクした『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』。
劇中、しっとりとした雨が降る駅で、登場人物たちが再会を果たすシーンは本当に素敵でした。
でも、本作の魅力はそれだけではありません。
家族との絆、夢を追うことの喜びと苦しさ、そして大人になることで直面する現実。
観終わったあとには、まるで自分もマーチ家の「5人目の姉妹」になったかのような気持ちになる作品でした。
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』あらすじ
南北戦争の時代、しっかり者の長女メグ(エマ・ワトソン)、内気な三女ベス、頑固な末っ子エイミー(フローレンス・ピュー)らマーチ家の四姉妹は、それぞれの道を模索していた。
なかでも作家を目指す次女のジョー(シアーシャ・ローナン)は、女性の自立が難しい社会に抗い、隣家の青年ローリー(ティモシー・シャラメ)からの求婚も断って夢へ突き進む。しかし、そんな彼女たちの前にも、やがて直面せざるを得ない過酷な現実の壁が立ちはだかる。
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』感想
過去と現在が交差する、美しい構成
本作最大の特徴は、少女時代の「過去」と、大人になった「現在」を交互に描くクロスオーバー構成です。
一見すると少し複雑に感じますが、実は映像の色味が時間軸を教えてくれる見事な仕掛けになっています。
少女時代は、黄金色や琥珀色を基調とした温かな世界。
一方で現在は、青やグレーを基調とした冷たい色彩で描かれています。
姉妹が全員そろい、未来への希望に満ちていた頃の輝き。
それぞれが自分の人生を歩み始めたからこその孤独や現実。
色彩だけで登場人物たちの心情まで伝わってくるようでした。
過去と現在を行き来することで、「あの頃は幸せだった」では終わらない人生の複雑さが浮かび上がります。
大人になることの喜びも苦しさも、どちらも大切な人生の一部なのだと感じさせてくれる構成でした。
5人目の姉妹(⁉)として体験する、現実の痛みと温もり
また、この時間軸によって、大人になって直面する「生きていくための選択や、思うようにならない経済の壁、愛と現実の狭間での葛藤、そして避けては通れない病や死」といった現実的な痛みが、より鮮烈に刺さりました。
逆に、だからこそ少女時代の温かで平和で楽しかった記憶が観る側にも鮮明に蘇り、自分の子供だった頃の温かな記憶を思い出して、とても懐かしい気持ちになりました。
同時に、まるで自分もジョー一家の一員(5人目の姉妹)になったかのようでした!もはや家族の一員として物語に没入できたからこそ、姉妹喧嘩のシーンは自分のことのように辛かったし、その後の仲直りにはホッとしたり。
また、普段は穏やかでありながら、実は「お腹の底で怒りを我慢している」と告白する母親の強さと苦悩には、リスペクトを抱かずにはいられませんでした。
そして(疑似)家族として没入して観ていたからこそ、ベスの死は心底悲しかった…
四姉妹の個性豊かな生き方
三者三様ならぬ、四者四様の生き方が描かれ、「自分ならどうか?」と、彼女たちの人生に自分の過去や感情を重ね合わせ、置き換えながら観るのも楽しかったです。
夢に向かって一直線に進むジョー。
愛する人との暮らしを選んだメグ。
誰に対しても優しく穏やかなベス。
現実を見据えながらも自分の気持ちに正直なエイミー。
誰か一人に共感するというより、「自分の中にも少しずつ彼女たちがいる」と感じられるところが、この作品の魅力なのかもしれません。
観る年代や環境によって、共感する姉妹が変わる作品でもあると思います。
マーチ伯母さんと『プラダを着た悪魔』のミランダ
個人的に印象に残ったのが、メリル・ストリープ演じるマーチ伯母さんです。
彼女はジョーに対して、「女性はお金持ちと結婚しなさい」と厳しい現実を突きつけます。
最初は冷たく感じるのですが、観終わったあとには少し見方が変わりました。
彼女は女性が一人で生きることの厳しさを誰より知っていたからこそ、あの言葉を口にしたのではないでしょうか。
その姿はどこか映画『プラダを着た悪魔』のミランダにも重なります。
厳しいけれど、その奥には相手を思う気持ちがある。
最後にジョーへ家を遺したことを考えると、彼女なりの愛情表現だったのかもしれません。
冷たく見える言葉の裏にある優しさを表現できるのは、やはりメリル・ストリープならではだと感じました。
👉ミランダについて書いてます!『プラダを着た悪魔』はこちら
印象に残った言葉
ジョー
本作には胸に刺さる言葉がたくさん登場しますが、ジョーが母親に涙ながらに本音を打ち明けるこのセリフが印象的です。
「女には心だけじゃなくて知性も魂もある。美しさだけじゃなくて野心も才能もある。世間の人が言うように結婚だけが女の幸せなんて絶対に思わない。なのに…たまらなく寂しいの」
ジョーの女性の自立を理想とする生き方の中に見えた本音が実にリアルで、胸が痛くなったシーンです。
実はこの言葉、原作小説にはなく、原作者ルイザ・メイ・オルコットが実際に残した日記や書簡から監督が拾い上げた言葉なのだそう。
「女の幸せ=結婚」という時代にNOを突きつける強さの一方で、ふと襲ってくる圧倒的な孤独感。「自立したい、でも寂しい」という矛盾する人間のリアルな葛藤は、現代を生きる私たちに通ずるものがあります…
エイミー
劇中、ジョーが今書いている作品(自分たちの日常を描いた小説)について、姉妹でこんな会話を交わすシーンがあります。
ジョー:「私たちの話なの。家族の揉め事や幸せなんて誰が読みたい?つまらないことよ」
エイミー:「誰も書かないからそう思うのよ」
ジョー:「小説の素材として小さすぎるわ」
エイミー:「書いてこそ、その重要性に気づくのよ」
ジョー:「あなた、そんなに賢かった?」
私はこのシーンがなにげにとても好きです。
なんでも「だめだ」とか、「意味ないかな」と思ったことでも、やってみて初めてその価値や重要性に気づいたり花開くことがあるのではないか。そう受け取り、今やりたいことや不満に思うことを変える小さな一歩を踏み出すとてもあたたかな励ましのように思いました。
まとめ
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』は、四姉妹の成長を描く物語であると同時に、「自分はどう生きたいのか」を考えさせてくれる作品でした。
家族と過ごした温かな時間。
大人になることの痛み。
夢を諦めない強さ。
さまざまな感情が優しく胸に残る一本です。
気づけば私も、マーチ家の食卓を囲み、姉妹たちと一緒に笑い、悩み、泣いていました…
まるで「5人目の姉妹」になったような気持ちで物語を体験できる映画です、いや本当に。
雨の日にゆっくりと観たくなる、温かくて希望に満ちた一本です。
※ラストシーンの意味や原作との違いについては、別記事で詳しく解説しています。
気になる方はこちらから👉『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』ラストの意味を考察|ジョーは本当に結婚したのか?ラストに隠された意味
🌿こんな人におすすめ
- 雨の日に、家でしっとり上質な映画を観たい人
- 家族や姉妹の物語に弱い人
- 登場人物に感情移入しながら映画を楽しみたい人
- 『プラダを着た悪魔』のミランダのような、厳しくも愛のある女性像が好きな人
- 「自分ならどう生きるだろう?」と、人生について少し立ち止まって考えたい人
- 優しく背中を押してくれる映画を探している人
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』配信・購入情報
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🎬『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』作品情報・キャスト
2019年製作/135分/G/アメリカ
原題または英題:Little Women
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
劇場公開日:2020年6月12日
監督:グレタ・ガーウィグ
原作:ルイザ・メイ・オルコット
脚本:グレタ・ガーウィグ
キャスト:
ジョー・マーチシアーシャ・ローナン
メグ・マーチエマ・ワトソン
エイミー・マーチフローレンス・ピュー
ベス・マーチエリザ・スカンレン
ミセス・マーチローラ・ダーン
セオドア・ローレンス(ローリー)ティモシー・シャラメ
マーチ伯母メリル・ストリープ
ダッシュウッドトレイシー・レッツ
ロバート・マーチボブ・オデンカーク
ジョン・ブルックジェームズ・ノートン
フレデリック・ベアルイ・ガレル
ミスター・ローレンス・クリス・クーパー
ハンナジェイン・ハウディシェル
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