『ワン・モア・ライフ!』感想・考察|もし人生が92分だけ戻るとしたら、何を選ぶ?

もし死後に“ロスタイム”があるとしたら、あなたは何をしますか?

本作は、思いがけず人生のロスタイムを手に入れた中年男性パオロが、残されたわずかな時間の中で家族との関係を修復しようと奔走する、ドタバタコメディです。

目次

『ワン・モア・ライフ!』あらすじ

 イタリア・シチリア島のパレルモに暮らす中年男性パオロは、通勤途中、いつものようにスクーターで身勝手な運転をしていたことが仇となり、交通事故であっけなく命を落としてしまいます。

予想外に短すぎる自分の人生に納得できず、天国の入口で猛抗議。すると、健康のために飲んでいた“スムージー”の分が寿命に反映されていなかったことが判明し、再計算の結果、92分間だけ人生を延長されることに。

とはいえ、与えられた時間はたったの92分。

パオロはそのわずかな時間の中で、自分勝手だったこれまでの生き方を見つめ直し、家族との関係を取り戻そうと奔走します。

限られた時間の中で、自分の人生と向き合っていく──
いわば“人生のロスタイム”を描いた物語です。

『ワン・モア・ライフ!』見どころ

本作の魅力は、ユニークな設定と人間くさいドラマ、そしてイタリア映画らしい軽やかさが絶妙に混ざり合っている点にあります。

まず印象的なのは、死後の世界が“役所”のように描かれているユーモラスな設定です。順番待ちや手続き、さらには計算ミスまで起こるという展開には思わず笑ってしまいますが、その裏にはどこか現実社会を思わせる皮肉も感じられます。

また主人公は、不倫を繰り返してきたどこかだらしない中年男性。決して共感しやすい人物ではありませんが、その不完全さがかえってリアルで、「自分も似た部分があるかもしれない」と感じさせます。

さらに、コメディとしての軽やかさを持ちながらも、「幸せとは何か」「家族とは何か」といったテーマにしっかり向き合っているのも本作の特徴です。限られた時間の中で人生を見つめ直す姿は、観る側にも静かな問いを投げかけてきます。

そして全体を通して漂うのは、どこか大らかで人間くさいイタリア映画らしさ。少し大雑把で陽気な人物像や、人生を深刻にしすぎない軽やかな空気感が、この作品ならではの味わいを生み出しています。

こうした点が魅力でもあり、好みが分かれるポイントでもある――そんな一本です。

『ワン・モア・ライフ!』作品情報・キャスト

作品情報

製作年:2019年(日本公開:2021年)
製作国:イタリア
上映時間:94分
レーティング:G
原題:Momenti di trascurabile felicita
監督・脚本:ダニエレ・ルケッティ(「ローマ法王になる日まで」)
原作:フランチェスコ・ピッコロ

キャスト

・ピエルフランチェスコ・ディリベルト
 主人公パオロ役。だらしなさと人間味が同居する中年男を、ユーモアと哀愁を交えて演じています。

・トニー・エドゥアルト
 妻アガタ役。自由奔放な夫に振り回されながらも、芯の強さを感じさせる存在。

・レナート・カルペンティエーリ
 天国の“役人”役。どこか事務的で淡々とした対応が、この作品のユーモアを引き立てています。

・アンジェリカ・アッレルッツォ
 物語を取り巻く人物のひとりとして登場し、作品にリアルな生活感を添えています。

『ワン・モア・ライフ!』感想①

92分で人生をやり直す──正直、最初は「ちょっと都合が良すぎる設定かも」と思いました。

でも観ていくうちに、その“限られた時間”だからこそ見えてくるものがあると気づかされます。

完璧じゃない主人公が、必死に家族と向き合おうとする姿は、不器用ながらもどこかリアルで、気づけば応援していました。

重すぎず、でもちゃんと心に残る。
「ちょっといい映画が観たいな」というときに、ちょうどいい一本です。

こんな人におすすめ

・クスッと笑えて、最後にちょっと考えさせられる映画が好きな人

・家族やパートナーとの関係をテーマにした作品に惹かれる人

・完璧じゃない“ダメな大人”のリアルに共感できる人

・イタリア映画特有の大らかさや人間くさい空気感が好きな人

『ワン・モア・ライフ!』感想②

パオロは生前、後先を考えずに妻アガタのママ友や仕事関係の女性と関係を持ち、育児も家事も妻に押し付けるなど、かなり身勝手な生き方をしてきました。

そんな彼が突然、大好きなサッカー観戦を放棄し、「家族四人で過ごしたい」「愛している」と言い出すのですから、当然ながら妻や娘アウオラ、息子フィリッポは戸惑い、どこか冷めた反応を見せます。

それもそのはず。

まさか92分後に夫(父親)が死ぬとは、誰も思っていないのですから。

この温度差がとてもリアルで印象的でした。
同時にパオロ自身も、自分がどれだけ家族をないがしろにしてきたのかを痛感していきます。

刻一刻とタイムリミットが迫る中、天国の役人の監視や邪魔も入りながら、それでもなんとか家族と向き合い、想いを伝えようと奔走する姿には、思わず応援したくなるものがありました。

正直、もし自分にロスタイムが与えられたら、好きなことだけに使ってしまう気がします。

それでもパオロが家族のために時間を使おうとしたのは、裏を返せば、それだけ家族が大切な存在だったからだと思いました。

短い時間で関係を取り戻そうとするのは虫が良い話かもしれませんが、どこか憎めないのは、自分に正直なパオロだから許せてしまう部分もあるのかも。

だからこそ、「大切な人とは日ごろからちゃんと向き合っておきたい」と、改めて痛感させられます。

いつ何が起きるかなんて、本当に分からないものですもんね。

余談ですが、作中の

「死神ですら間違えるのだから間違いを恐れる必要はない。人間は間違わなくなったら終わりだ。人生とは“取るに足らない幸せの瞬間”からなるものなのだから」

という言葉がとても印象に残りました。

失敗することを過剰に恐れがちな自分には、かなり刺さる一言でした。

……とりあえず、スムージーは飲んでおこうと思います。

memo

後悔してからでは遅い――そう分かっていてもできないのが人間。
だからこそ、今ある日常を大切にしたい。

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『ワン・モア・ライフ!』考察

※ネタバレあり

ラストの意味

本作のラストは、いわゆる劇的な奇跡やわかりやすい感動ではなく、現実的な余韻を残します。

92分という限られた時間の中で、主人公パオロは自分のこれまでの生き方と向き合い、家族との関係を取り戻そうとします。しかし、その時間はあまりにも短く、すべてを完璧にやり直すことはできません。

だからこそラストで描かれるのは、「人生はやり直せる」という希望ではなく、“気づいたときにはもう遅いかもしれない”という現実です。

それでもこの作品が重くなりすぎないのは、完全な後悔ではなく、“ささやかな気づき”が残るから。

タイトルにもある「取るに足らない幸せ(=Momenti di trascurabile felicità)」とは、特別な出来事ではなく、日常の中にすでに存在していたものだと気づかされます。

このラストは、「人生の残り時間が少ないから大切にしよう」ではなく、

今をどう生きるかを問いかけてくる結末になっています。

原作との違い

本作は、フランチェスコ・ピッコロの短編集『Momenti di trascurabile felicità』が原作です。

ただ、映画はこれをそのまま映像化したわけではなく、かなり大胆にアレンジされているそう。

原作は、日常の中にある“ささやかな幸せ”を切り取った短いエピソード集で、ストーリーというよりも、共感や気づきを楽しむ作品とされています。

一方で映画は、「事故で死んだ男が92分だけ人生を延長される」という、はっきりした物語が軸になっています。

そのため、原作のテーマをベースにしつつ、映画としてひとつのドラマに再構成されている印象です。

ざっくり言うと👇

原作 → 日常の中の小さな幸せに気づく視点
映画 → 限られた時間の中で人生を見つめ直す物語

同じテーマでも、見せ方が違うのが面白いところです。

まとめ|『ワン・モア・ライフ!』がくれた気づき

原作が描いていた“ささやかな幸せ”というテーマはそのままに、映画では「限られた時間」という形で、より強く問いかけてきます。

もし自分に、パオロと同じように時間が与えられたら─
何を思い、誰に会い、どう過ごすのか。

きっとその答えは、特別なことじゃなくて、
これまで何気なく過ごしてきた日常の中にあるのかもしれません。

だからこそ本作は、
今この瞬間をどう生きるかについて、考えさせてくれる作品でした。

『ワン・モア・ライフ!』配信・購入情報

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この記事を書いた人

映画と暮らしの中の “ちょっといいもの” を綴るブログ。

映画好きの二児の母。アラフォー/首都圏在住。

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