『紙の月』感想・考察|なぜ彼女は罪を犯したのか。共感してしまう怖さが残る作品

『紙の月』は、美人で聡明な銀行員の女性が、顧客の孫の大学生と関係を深め、
やがて横領へと踏み出していく物語です。

本作を観て、賢くもなく、美人でもない自分でよかったのかもしれない…
と思わずつぶやいてしまうほどでした…

目次

『紙の月』あらすじ

銀行で働く主婦・梅澤梨花(宮沢りえ)は、顧客の資産を管理する中で、
ある出来事をきっかけに横領へと手を染めてしまう。

最初はほんの小さな出来心。
しかし、年下の男性・平林光太(池松壮亮)との出会いを機に、
光太との交際に使う金額は次第に膨らみ、後戻りできない状況へと追い込まれていく。

さらに、同僚の相川恵子(大島優子)や、夫・正文(田辺誠一)との関係にもひずみが生まれ、
日常と嘘の境界は次第に曖昧に。

やがて、平穏だった生活は静かに崩壊していく――。

『紙の月』見どころ

銀行に勤める平凡な主婦が、ある出会いをきっかけに横領へと踏み出してしまうという
本作は、危うい転落を描いた心理サスペンスドラマです。

原作は角田光代(『八日目の蟬』)による同名小説で、
第25回柴田錬三郎賞を受賞。
“お金を介してしか成り立たない関係”という歪さが、
物語にリアリティを与えています。

見どころは、「普通の人」が少しずつ壊れていく過程を丁寧に描いた心理描写です。

“バレるかもしれない”という不安がじわじわと続き、
緊張感が途切れません。

さらに、宮沢りえの抑えた演技が、
その揺れ動く心情をより際立たせています。


日常の中に潜む孤独や欲望が、
静かに、しかし確実に伝わってくる作品です。

『紙の月』感想

本作の主人公は夫との関係から大学生との情事から、顧客のお金を使うという
とんでもないことをして、どんどん深みに自らハマっていくわけですが。

主人公の持つ満たされない気持ちは実は誰にでも持ちうることで、
それが犯罪に向かうかどうかは意外と紙一重だったりするのかもしれないと
思わず思ってしまいました。
そうどこかで共感してしまう自分がいることも怖いですが…。

してはいけないことに踏み込んでいく緊張感と、
観る側に「その気持ち分かるかもしれない」と思わせるリアリティ。
そのバランスが絶妙で、最後までドキドキハラハラして目が離せませんでした。

そして、その満たされない思いや、現実から少し逃げたくなることって、
誰にでも多かれ少なかれやっぱりあると思うんです。

満たされないものを、何で埋めるのか。
その選び方ひとつで、人生は大きく変わってしまうのかも。

筆者の場合は、子どもとの時間はもちろんですが、
お恥ずかしながら“タイプロ(タイムレスプロジェクト)”をきっかけに、
アイルグループ「timelesz」にしっかりハマってしまったタイプで。
やっぱり推しがいると、その時間が充実するものです。

日常をちゃんと生きていくために、“逃げ場”は必要なのだと思いました。
そういった普段の生活にある小さな楽しみや没頭できるものが、
自分をちゃんと現実につなぎとめてくれているのだと実感しました。

そして、観終わったあと「至って平凡な自分」に、どこか安心する自分も…。
強がりではありません(たぶん)。

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『紙の月』考察

ここから少し本作を考察してみたいと思います。

満たされない日常と心の空白

そもそも、主人公・梨花の生活には、
大きな不満があるわけではありませんでした。


ただ、夫との関係も表面上は穏やかで安定していたものの、
心が通っている実感はほとんどありませんでした。

昇進祝いにとお揃いの腕時計をプレゼントされたのに、
出張土産に妻に高級腕時計を買ってくるという…。
優しさはあるのに、関心は感じられず、
一緒にいるのに他人のような距離感を感じていたのが実情でした。

その小さなズレの積み重ねによって、
梨花の孤独が大きくなっていったのだと思います。

光太との関係=“生きている実感”

光太との出会いは、梨花にとって転機でした。

誰かに必要とされること。
誰かのためにお金を使うこと。

満たされなかった日常の代わりに、
自分が生きているという実感を得ていったのだと思いました。

だからこそ、その関係を手放せなくなっていったのだと思います。

境界線は、静かに壊れていく

最初は、これくらいなら大丈夫だろうと、ほんの小さな一歩だったはず。
でも一度越えてしまうと、いけないことという感覚は、
少しずつ薄れていったんだと思います。

そして気づいたときには、もう戻れない場所にいる。

この過程があまりにも自然なところもリアルで怖かったです…。

平凡であること

そしてもう一つ。
この物語は、梨花の美貌や聡明さがあったからこそ始まった側面もあると思います。

きれいじゃなければ自分より年下の大学生との恋愛も始まらなかっただろうし、
頭が良くなければ偽造や着服しようという知恵や手段も思いつかなったはず。

そう考えると、整った容姿や明晰な頭脳なんて無い方がいいに決まってる…!
そんな風に強気に思いたくなるほどに、共感できるリアルな怖さが描かれていた作品でした。

memo.


日常をちゃんと生きていくために、“逃げ場”はきっと必要なのだと思う。
推しの存在って、思っている以上に大事なのかも。

まとめ|『紙の月』がくれた気づき

満たされないという想いは誰にでも持ち得ることだし、
それを何を満たすかが大事だとつくづく思いました。

推しを持っていて、至って平凡なことも、代り映えのない毎日であろうとも、
それが自分なりの幸せならそれでいい。
と肯定できる物語でした。

横領がバレるのかどうか、主人公の最後はどうなるかなど、見所の一作です。

🌿こんな人におすすめ

  • なんとなく満たされない気持ちを抱えたことがある人
  • 「普通の生活」に違和感を感じたことがある人
  • 静かなのに心がざわつく映画を観たい人
  • 誰かの選択を、完全には否定しきれないと感じる人

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※配信は状況によって変わることがあります。

『紙の月』作品情報・キャスト

製作年:2014年
製作国:日本
上映時間:126分
レーティング:PG12
配給:松竹
監督:吉田大八(「桐島、部活やめるってよ」)
原作:角田光代
キャスト:宮沢りえ(梅澤梨花)池松壮亮(平林光太)
大島優子(相川恵子)田辺誠一(梅澤正文)
小林聡美(隅より子)近藤芳正(井上)

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この記事を書いた人

映画と暮らしの中の “ちょっといいもの” を綴るブログ。

映画好きの二児の母。アラフォー/首都圏在住。

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